SimpleScott とは去年の夏、東京で出会いました。Yosh がIIDと一緒に開いたSimpleScottのプレゼンテーションを、私はスコットが誰だかよく知らないまま、「オバマ大統領選のデザインディレクター」というものすごい肩書きにまんまと惹かれて聴きに行きました。スコットのプレゼンテーションは、確立された哲学と理論、それに基づいた冒険とクリエイティビティー、そして実践性において卓越していて、ワールドクラスのクオリティーとはこういうものなんだなぁと、ただただ感嘆するばかりでした。
スコットの簡潔で秀逸なスライドに見蕩れながら、オーディエンスとしてほげーっと座っていたところに、Yoshからの「ナホ、通訳やってくれない?」の無茶振り(笑)。IIDの人が素晴らしい通訳してくれていたのだけど、さすがに長丁場だったので疲労が見え隠れし始めていた。そこで名MC・Yosh からご指名を受けた私は前に出てスコットのvoiceとなったのでした。これが出会い。その後、何回か一緒にご飯を食べて、こんな刺激的な仲間が近所にいて、カフェで一緒に仕事をしながらあれやこれやと想いを語り合えたらどんなにかいいだろうと、強く感じたのを覚えています。
あれから1年。TEDxTokyo and TEDxTokyo yz の良きチームメンバーであり、弟的友達であるヒロが、スコットのオフィスでインターンをすることになり8月にシカゴに渡りました。もともと9月はベイエリアに来ようと考えていたので、どうせならシカゴに寄っちゃえというわけで、シカゴ。
Midway Airportまでスコットとヒロが迎えに来てくれ、そのままSimple Studio へ。新しいウェアハウスにオフィスを移したばかりなので、まだまだオフィスの中は作りかけ。大きな空間をポーンと借りて、中身はいかようにも自分色にデザインできるのは、アメリカのいいところだよなーと思います。
とにかくひろーーーーーーーーーーい。
一つ前のエントリーで書いた「巨大テイクアウト用コーヒーカップ」も、こんな大きさに見えてしまうくらいだだっ広いスタジオです。
このスタジオは、スコットの会社である “SimpleStudio” と、彼が属してるクリエイター集団 “Post Family” 2つの共同スタジオになっていて、上の写真にある一番広い部屋に加えて、奥にさらに5〜6の部屋がついています。
レタープレスの部屋。
レタープレスで使うレターヘッドの山。
これまで色んなところを訪れては違ったフォントを見つけ、集めてきたそう。
大きなレタープレスを動かしてくれました。最初はインクを乗せるために回し、なじんできたらレターヘッドと紙を入れて、いざ印刷。
日本でも最近よく耳にするDIY (Do It Yourself) ですが、本場アメリカのDIYはレベルが違う。アメリカに住んでた頃、ルームメイトがおんぼろキャンピングカーを買い取って、床を張り替え、配水管を変え、エンジン周りをアップグレードし、座席を付け替え、窓のカーテンまで自分で縫って、全部1人で丸取っ替えしるのを見て驚愕したけれど、スコットも半端なかった。空っぽの「箱」だったウェアハウスをSimpleStudio に変身させている過程を見せてくれました。何度見ても驚くなー。このアメ人達のこだわりようと、一般的なシビル・エンジニア・スキルの高さ。アーティスト+職人+エンジニア+大工。
私が訪れていた時は、メインルームのキッチン、バスルームのドア、奥の部屋のバーカウンターという大きな3つの工事が行なわれていました。これも自分たちでやっちゃう。
驚嘆その①
バスルームのドアをゼロから作成し取り付けていました。薄く切った細長い木の板を、木工細工のように張り合わせてボードにし、スライド式のドアが完成。微妙な木の色合いの違いがよく計算されていて、美しい。
ドアの側面
1つ1つの板の木目と、それらが合わさった時のグラデーションと、両方の美が活かされているデザイン。
続いて驚嘆その②
キッチンの流し台もゼロから作る!
作り方は至ってシンプル(笑)。まず、大きな厚い木材を2つ並べてテーブルトップにします。
2枚の材木を固定するために、大きな鉄の棒をざくっと貫通させます。
テーブルトップに穴をくり抜くと、そこがシンクになります。床が見える(笑)。
ここに銀色のボールを埋め込むと、シンクの出来上がり(予定)♪
水道の蛇口も取り付け前。重い。
テーブルトップが全て完成したら、水道管を繋いでキッチンの完成となります。
奥のギャラリースペースに建設中のバーカウンターも、SimpleStudioというデザインオフィスが持つ哲学を、設計とデザインにそのまま反映させたものでした。ドアやキッチンシンクと同じように、選び抜いた深みのある木材を何枚も組み、積み上げて作った、素朴さと重厚さとエッジの効いたファッションが混在。木の持つ本来の味を活かし、凹凸もそのまま残し、シンプルな仕上がりにしていました。洗練されたロジックに基づくデザイン。計算と偶然性の優しい融合。スコットの「もの」を愛する心が120%出ているバーカウンター。出来上がったら写真を見せてもらおう!
この後、スコットがこだわりのカフェラテを淹れてくれました。求める味に辿り着くために何度も試しては、おいしい味が出ないので、「フランシスフランシス(エスプレッソマシンの名前。商品名が本当にそうなんです。)は完全に綺麗にして欲しいに違いない!」と感じたらしく、もくもくと掃除をし始め、愛情をたっぷりかけて磨き上げ、できあがったラテ。苦みと香りが濃厚なヨーロピアンスタイル。美味。
Great to have you 🙂
Great to have been there. Hope to come again while you are there.