グラフィック、そしてプロセスレコーディング

2月20、21日は「未来を創るワークショップ」に参加しました。これは「偶然の未来を必然にしてしまうための閃き」を得るプログラム。1日目はグラフィックレコーダ—として、2日目はプロセスレコーダーとして作品創ってきましたよ。

1日目の午前中は榎本英剛さんのストーリーに沿って、ヒストリーマップを描きました。まずはアメリカから持ち帰ったコーチングを日本に広めるべく、CTIジャパンという組織を立ち上げてコーチングの礎を築きました。続いて、イギリスよりトランジションタウンという構想を学び、神奈川県で実践し始めました。さらに、南米のインディアンが受け継ぐ知恵を、“Change The Dream” という活動を通して日本人に教えていらっしゃいます。ゴールやビジョンを明確にすることがよしとされる傾向にありますが、それだけに囚われるのではなく、自分の内なる声に耳を傾けて流れるままに進んで行くことが、本当に描きたい未来へ近づく道だということを体得された方でした。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

グラフィクレコードの説明をちょっとしますね。写真をクリックすると拡大したものが見れます。1番下の段は榎本さんの実際取った行動や、その時々で思ったことをレコードしています。真ん中は、地理的な移動や、メインとなるプロジェクトについて記してあります。1番上の、オレンジ色のパッと光っている円で囲まれているのは、榎本さんの内なる声です。

午後は土屋さんというファシリテーターの方がAppreciative Inquiry (AI) を応用したワークショップをおこないました。AIは、自己内の気付き、他者との対話、ゴールを設定し、行動を起こさせ、変化を目に見える形にし、結果を確実に出していくという一連のプロセスをまとめたもので、組織開発の方法論として使われています。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

半日かけて、大きくわけて3つのことをしていきました。最初は、2人組になって与えられたスキームに沿ってインタビューし合うもの。1時間ほどしたら、今度は6人程度のグループを作り、各ペアが何を話したのかを共有します。つまり、各グループに3組か4組のペアがあった、ということです。合計で7グループできました。1番左側のグラフィックは、各グループ内で話したことが何だったかを要約してもらい、会場全体で報告した時のものです。言葉を中心にキャプチャーしました。

次にまた、7つのグループに戻ってもらいました。それまでのアクティビティーでひっかかった言葉、「すごい」と感じた言葉を参加者はポストイットに書き留めていたので、それを並べ替えてマッピングし、全体像を比喩を使って表現するというもの。真ん中のグラフィックは各グループがどんなメタファーを思いついたかを絵で表しています。

右側のは、そのメタファーをもとに各グループで「描きたい未来」を決めてもらい、ロールプレイで表現したものをレコードしました。

2日目はプロセスレコーディングに初挑戦。何それ?って、言ってしまえばコラージュです。カメラマンの方が2日間の様子をずっと撮影していました。そのデータをどんどんプリントアウトしていって、その場で切ったり貼ったりコラージュを創っていくという作業です。見た方が早いのでこれ↓

created by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

写真が捉える臨場感というのもパワフルで、長い2日間を終えた参加者が、部屋を退出しながら最後にこのコラージュの目にして、立ち止まり、上から下まで何度も何度も見ては噛み締めている様子が印象的でした。

Performative通訳

新しい通訳の形を提唱します!

パフォーマティブ通訳。

私は逐次通訳のお仕事もしています。従来の通訳 ー例えば、ビジネスにおける提案や交渉時に求められる、淡々と言葉の意味を汲み取り、どちらかと言えばパーソナリティーを取り除いた平面的な通訳ー は依頼されれば、もちろんお引き受けします。この前も、日本の市場に参入したい米企業が、日本での事務局を代行してくれる日系企業に対してRFPを募集していて、その提案書プレゼンの通訳をしました。

でも「コミュニケーション・プロセス・デザイン」という切り口から見た通訳は、この淡白型(descriptive) 通訳とはちょっと違うんです。

それがパフォーマティブ通訳。

これは、

  • 自己の内面や他者との「対話」を重視するワークショップなど
  • 強い存在感や雰囲気を持つ人がスピーチする時
  • それらが外国語(私の場合は英語)で行なわれる時

に必要な通訳だと考えています。

こういうケースでは、通訳士の役目は、単に通訳する相手の言葉(その背景に潜む文化的コンテクストも含めて)を日本語として意味を成すように訳していくだけでは足りないと思っています。なぜかと言うと、話し手の根底にある世界観や理念、話にはのぼらないけれど話し手が日々関わっていることなどを通訳士が理解し、共感し、話し手が言外で伝えるユーモアや情熱といったメッセージをも通訳の中に含めていかなければ、意味が半減してしまうからです。「言葉」だけに集中し、話し手の人柄、生き方などを軽視した通訳では、価値がまったくなくなってしまうことだってありえます。

だから、話し手の熱のこもった声や、興奮してきらきらと潤んだ目までも伝えるパフォーマティブな通訳がいてもいいんじゃないかなーと思っています。

パフォーマティブ通訳をする必須条件としては、

  • 私自身が、通訳する相手の哲学を理解、共鳴している
  • 組織開発やコミュニケーションなどの同じ畑にいる、あるいは似たようなビジョンの元で活動している

といった点です。

ここがクリアしないと、私が気持ちを込めて語りかけることができないから。

これまでこんな人たちの通訳をしてきました。

外国の人が日本人に何かを伝えたい、日本人が外国の人の話を聞きたい、(またこれらの逆)、というコミュニケーション欲求を満たすのが通訳。だから、通訳も「コミュニケーションのプロセス」だと思います。そのプロセスをいかにデザインするか。それが私の通訳の在り方です。

とかなんとか言って、通訳しながら、勝手に自分の想いを話しているみたいな錯覚に陥って興奮してしまうだけだったりするんですが。

グラフィック・ファシリテーションって?

先日、Art of Hostingというワークショップにてグラフィック・レコーディングしてきました。

たった1行に聞き慣れない言葉がたくさん詰まっていると思いますが、まず、Art of Hostingとは、ワールドカフェ、オーブンスペーステクノロジー(OST)、サークル、Appreciative Inquiry (AI) といった「対話」を促すためにデザインされた「仕組み」を、複数組み合わせることによって、私たちの自己観察力を深め、思考パターンの転換を図り、また、一緒にワークショップを受けている人同士の絆を強めてくれる1つの方法論です。最終的に、社会に影響を及ぼすための「行動」を生み出すツールです。リーダーシップ育成、組織開発、国家レベルでの社会変革などにも用いられている、文字通り、実践的な「技術」です。(この場合の”art”とは、芸術ではなく技術を意味します。)

Art of Hostingの第1人者、Bob Stilger氏がアメリカより来日し、初めて日本でワークショップを開いてくれたんです。そこで、Art of Hostingってどんなことをするのかね?ということを説明するような記録を作ってと欲しい依頼され、参加してきました。

(graphic recorded by Naho Iguchi)

(graphic recorded by Naho Iguchi)

グラフィック・レコーディングというのは、1人の講演でも、10人のミーティングでも、50人のワークショップでも、数百人のイベントでも、種類や規模は何でもいいんですが、誰かが話しているものを、その場で聞きながら同時進行で言葉、アイコン、チャート、絵などを使い、文字の色やフォントデザインも変えながら、大きな白い紙の上に記録していくことです。

グラフィック・レコーディングは、もともとグラフィック・ファシリテーションというものから生まれました。レコーディングは「記録」すること。一方、ファシリテーションは、ミーティングやパネルディスカッションなどを「進行」することです。英語本来の意味は「促進する」とか「容易にする」。1人以上の人間が集まって会話をする時に、上手な質問をしてみんなに深く考えてもらったり、誰か1人が会話を独占していたら適当なタイミングでスッと入って、他の人が発言できるよう促したり、話の焦点が議題から遠く離れてしまったら、それに気づかせてあげるような言葉を投げかけたり、会話の舵取りをしながら、なんらかの帰着点まで導く役割を担います。

で、

グラフィック・ファシリテーションって何よ?というと、簡単に言えば、上記の2つを掛け合わせたもの。ファシリテーターとしてグループ内の会話をまとめていきながら、一緒にグラフィック・レコーディングもしちゃいながら、与えられた時間の中で目的を達成させるという、1人何役もこなすものです。

どんな場でグラフィック・ファシリテーションが有効かというと、プレインストーミングの質を高めるのにもいいですし、そこから進んで、実行計画案にまで持っていくことにも使えるし、組織の長期/中期/短期目標を決めるのにも使えるし、何か節目の時に過去50年を振り返る、ってな時にも使えます。何層にも折り重なる複雑な情報が飛び交うのを、一枚の大きな紙に、従来のノートやホワイトボードや黒板での単調な記録の取り方とは違った、目で見てパッと感覚に響く情報整理の仕方をしていく。

自分や周りの人が発している言葉が、目の前でライブで記録されていくのを目で読み、再び理解することによって、新しい発見が生まれます。人って、耳で聞いていることって、理解してそうでその実、正確な記憶として蓄積されない場合が多いですし、移り行く言葉の交差の中でどんどん変化していくのが普通なので、話し合いで相互理解や合意が得られたというのもわりと錯覚だったりするんです。本当は、何時間もかけて、何も話し合われていなかった、なんて日常茶飯事。そのことを視覚的にも学ばせてくれるし、さらにファシリテーターが自ら紙の上にまとめた色彩豊かでわかりやすい情報をもとに、混線しがちな会話を「そこそこ、それが必要なんだよ!」という痒いところに手が届く、みたいなポイントへしっかりとガイドしてくれる。だから、グラフィック・ファシリテーションというのは、会話の意義を明確にし、そこに費やす人的資産と時間と労力を最大限に生かすのに役立ちます。

これまでに、企業内のトレーニング、役員の戦略会議、今回のようなワークショップから、トークショーやストーリーテリングなど、色んなところでグラフィック・ファシリテーション及びレコーディングをしてきました。今年はもっと違ったシチュエーション、違ったニーズの中で応用していきたいなと思っています。