Visualize Your Process ワークショップのこだわり

先週の土曜日に

Visualize Your Process 〜グラフィックファシリテーション&beyond〜

というワークショップをしました。

photo by Junya Mori

満員御礼ありがとうございました。12名の参加者+3名のチームメンバー+わたし

場所はgreenz.jpのオフィスをお借りしました。(ありがとー!!!)

1年半くらいグラフィックファシリテーション(GF)、グラフィックレコーディング(GR)をやってきて、たくさんの方から「これってどうやったら学べるんですか?」という質問、「教えて下さい!」というリクエストを受けてきました。これまでは依頼された組織へ向けてのクローズドなワークショップしかやっていなかったんだけど、この度、満を持してGFのオープンワークショップをしました。複数のファシリテーターやコンサルタントと組んでチームベースで仕事をする場合が多いので、今回のように自分1人でプログラムの骨子を考え現場を回していくというのは、実はけっこう久しぶり。(企画初期段階からサポートしてくれている、玲ちゃん、さとぽ、チャーリーというチームがいますが、ファシリテーター/トレイナーとしてはピンで入った。)

in-houseトレーニングの場合は、GRのテクニックのみを教える場合が多い。だけど、Visualize Your Process は私発信のサービス/プロダクトなので自由奔放に創りました。GFという側面だけではなく、コミュニケーション・プロセス・デザイナーとしての価値観をプログラムの隅から隅まで盛り込んでいきました。グラフィックレコーディングの技術、ファシリテーターとしての心得、普段の殻を破って創造的にアイディアを膨らませていくこと、ワークショップという経験をどうやってデザインしていくか、そんなことを体感し学べる場。

プログラムそのものの説明は置いといて、ここでは裏側のこだわりについて話そうかと。

(参加者の1人、@DiscoveryCoach さんがブログに書いて下さっています。どうもありがとうございます!!)

【こだわりポイント1】部屋のレイアウト

英語では “out of the box thinking” などと表現される、自分の殻を破って考え行動すること。これが重要ってのは理解できるけど、いきなりやれと言われてもどうすればいいのかわからない。そこで、物理的な環境を少し変えることにより行動パターンを変え、結果、考え方の転換をもたらすという認知行動学的なアプローチをワークショップの会場デザインでやってみました。

って、論理的にエラそうな説明してるけど後付けで、パッと思いついたアイディアをやってみただけです(笑)。

具体的には、机と椅子は取っ払い、広い空間を作って床に直接座るスタイルにしました。講師/ファシリテーターである私と参加者の間に遮るものは何もない。必要な人は椅子、机を出してこれます。私も床に座ったり、椅子に腰掛けたり、立ってGFしたり、常に体を動かしていました。

床にGFで使用するロール紙を敷き詰めて、カラーマーカーを参加者の手の届く所にたくさん用意。巨大な白い紙の上に座って好きなことを書いたり、GRの練習ができるようにしました。もちろん、壁にもアメリカから持ち帰ってきた120センチ高のロール紙を貼り、参加者みんな立ち上がって、全身を使って思い思いに縦、横、斜めに線を引っぱり、円を描き、アイコンやレタリングの練習をくり返しました。

Photo by Junya Mori

 

【こだわりポイント2】Psychological Safetyを創る

サイコロジカルセーフティーとは心理的安心感のこと。初めて会う人と一緒に初めてのことを学ぶ時、私たちは精神的に不安になり緊張します。自分の言動が「正しい」かどうか疑念が生まれ、技術的に下手な部分を他人に見せるのは羞恥心が先立って体が固くなってしまう。こういった気持ちを和らげ、新しいこと/苦手なことを試すというリスクのある行為をするには、それ相応の準備が必要になります。

そこで、ワークショップ開始と同時にアイスブレーカーに「うろ覚えお絵描き」をして、

「絵が苦手な私でもグラフィックファシリテーションできるの?」

という多くの人が持つ不安を溶かしてあげました。私のうろ覚えドラえもんやバカボンのパパを見たら「奈保さんは絵が上手だからグラフィックファシリテーションできるんですよ」などと口が裂けても言えないだろうなぁ。。。かんなり変なもん描く時あるからねー。

ちなみにこれが私のうろ覚えスネ夫と

 

うろ覚えアンパンマンです。

これでいいんですよ。十分(笑)!

参加者同士が親しくなっていくことも大切。緊張がほぐれ、Psychological Safetyが醸成されます。そのために、そこまでダダっ広くない部屋を選び、人数も許容範囲ギリギリまで入れました。こうやって物理的に密な距離感になると(しかも机や椅子という、他者との身体を切り離すものも入れなかったので)自然と親近感が生まれます。あと、実はどーーんと広い空間で野放しにするより、少し詰まった感じの方がクリエイティブになれたりして。

Photo by Junya Mori

【こだわりポイント3】おいしいお茶

創造性や刺激に富んだ発想は視覚からだけでは生まれない。味覚や嗅覚も重要な感覚器。視覚よりも記憶に残る場合があります。と、これももっともらしそうな説明で、要は、私がおいしいもの食べるのが好きだから、みんなにもおいしいものを食べて欲しい!ってシンプルな気持ち。その方が絶対に楽しくなるでしょ。笑顔になるし、会話が弾む。

というわけで、おいしいお菓子と飲み物を用意しました。私が大好きな地元のお菓子屋さん、ラマーレ・ド・チャヤのクッキーと、フレンチパン屋さんのブレドールからチーズとココア2種類のラスクと、有明屋さんの胡麻せんべいと昆布あられ。甘い系としょっぱ系バランス良くね。飲み物は数種類のフレーバーコーヒーと、秋を感じさせる「いもくりかぼちゃ茶」というルピシアのブレンドティー。飲むと本当にほっこりイモ、栗、カボチャの香りが鼻孔をくすぐるんです。スイートポテト食べてるみたい。ノンカフェインの黒豆茶も用意しました。

短いトイレ休憩を数回より、1度のお茶の時間をしっかり入れた方が心身がリフレッシュできるし、ワークショップというシチュエーションを少しでも外れた雰囲気で参加者同士が交流できるので使える仕掛けです。

【こだわりポイント4】匂い

コーヒーや紅茶と同じように、お部屋全体の香りも大事。あと、匂いで気になるのはやっぱりおトイレ。メイン会場が綺麗でも一旦そこを出ると「くわっ」ってなっちゃうのはイヤだよね。というわけで、おトイレの飾り付けと香り付けにも気を配りました。秋らしい一輪挿しをし、タオルを用意し、レモングラスのお香を焚いて快いおトイレ時間を!

【こだわりポイント5】私が自然体であること

ワークショップという場の責任者=ホストであり、参加者を楽しませるエンターテイナーであり、GFを教える先生であり、参加者同士のコミュニケーションを生み出していくファシリテーターであり、というように、私が何役もこなすのが “Visualize Your Process” の肝なんだなーと、やってみて実感。

こうやって場の状況に応じて即興で変幻していくには、何よりも私自身がリラックスしていないといけません。私が緊張していたり焦ってしまっては、それが参加者へ伝播し、私はますます立て直そうと頑張り、、、どんどんドツボにはまっていきかねない。そのため、ワークショップのイントロでプログラム概要やhouse keeping info(携帯電話、飲食、トイレの場所等のエチケットに関する基本情報)を説明する際に、自分がもっとも効果的なコミュニケーションをするために以下のことを伝えました。

  • 友人/知人が参加者の場合、講師ー参加者という関係性ではなく、いつも通り友人としての呼び方、話し方で接っする

これまで同僚や友達が私のワークショップに参加してくれた時、「ファシリテーター」「トレイナー」というプロとしての社会的役割を果たそうとすることに気を取られていました。普段は名前で呼び合ってるのに「さん」付けにしたり、丁寧語で話しかけることで、友人としての自然な距離感が崩れ、妙によそよそしくなり、私は違和感に苛まれ、結局、ファシリテーターとして効果的に立ち振る舞うことができないという事態を経験しました。去年は、違和感にさえ気づかなかった。今年は、違和感に気づき始めたけれど何が原因がはわかっていなかった。それが最近、「はっ!!」っと発見したんです。なので、今回はしょっぱなに「今まで通りの距離感で」と宣言してみました。初めて出会った参加者に対しては、初めての人として接することも伝えました。

普段の生活において、親しい仲間と新しい人と同時に過ごす機会ってよくある。ミーティングの時や、ご飯を食べに行く時。要は、そういう普段の状況下において私が自然に取る態度を、ワークショップという枠組みの中でも取りたかった。ワークショップだからという理由で、さらに違ったレイヤーをコミュニケーションの中に敷きたくなかった。

私にとっては効果的な戦術だったと思います。

Photo by Junya Mori

ワークショップのデザイン

先週木曜日に行なわれた green drinks へゲストスピーカーの1人として呼んでいただきました。テーマはこのブログエントリーと同じ「ワークショップのデザイン」。「ワークショップ的なデザインの仕方でプロジェクトを回す例」としてTEDxTokyoTEDxTokyo yz の “how” の部分をかいつまんで話しました。

モデレーターのYoshから事前にもらっていた質問は3つ。それに対して3つのグラフィックを描きました。

(1)コミュニケーションプロセスデザインって何ですか?

コミュニケーション、プロセス、デザインとは、

「自分のやりたいことを3つのキーワードで表現したらどうなる?」

と問われたら答えとなるエッセンスです。それを繋げて自分の職業名にしただけ。こういう分野や職業がもともとあったわけではなく、ロールモデルがいるわけでもなく。想い描くままにアイディアを形にしている段階です。仕事を始めた頃は、経験も何もない自分が「コミュニケーションプロセスデザイナー」と名乗る自信がありませんでしたし、言ったところでわかってもらえないだろうなぁという不安もあった。だから、「組織開発系コンサルタントです」とか「戦略人材育成やっています」とか「異文化コミュニケーションのトレーニングします」とか「キャリアカウンセリングしてます」とか、聴き手がわかる既存の言葉をとっかえひっかえ使って説明していました。

でも、4ヶ月くらいが経った時に

「言っちゃったもん勝ちじゃない?」

とはたと気づき、コミュニケーションプロセスデザイナーと名乗り出すようになりました。こちらが言ってしまえば、人は私のことをそう認識し、その道のプロとして扱うようになります。周りからの認識や期待に応じ、自我はそれに合わせて行動しようとするので、言ってみれば、自分の夢を叶えるために社会心理学的な他己像とアイデンティティーの関係性を逆手に取った感じです。

コミュニケーションプロセスデザイナーの詳細については別のエントリーで。

次の質問。

(2)いい空気が流れるプロジェクトメンバーを見つける秘訣は?

私がディレクターを務める TEDxTokyo、そして代表をしている TEDxTokyo yz は、「TED」というグローバルムーブメントになっている明確なブランドがあります。TEDからライセンスを取得した独立任意団体が TEDxTokyo および TEDxTokyo yz です。だから、TEDのことを知っていたり、TEDx に関わってみたいと考えている人という時点でマッチングの可能性が高い。自分たちと仲間としてやっていける人かどうかを見極めるのに、自分の組織(会社でもチームでもグループでも)のコンセプトやブランディングを明確に打ち出すことは重要です。その土壌があってこそ、その他の仕組み作りがスムーズにいきます。戦略は大きく3つ。

  1. 人的リソースを最大限活かす(例:信頼している人に「これぞ!」という人を推薦してもらう)
  2. 組織デザイン(例:求める人材を獲得するための適切なアンケートの作成;目指すものと一致した組織風土を維持;組織風土に合った日々の活動プロセスや意思決定方法を選択;これを常に振り返り、改善/調整していく)
  3. コミュニケーション力(例:メールベースで信頼を構築するための文字対話のスキル)

これについても、別途さらに詳しく書こうと思ってます。

最後の質問です。

(3)多様なメンバーを同じ目的に向かって前に進めるにはどうしたらいい?

氷山のモデルを拝借してみました。人間が意識している部分は海面に出ている氷山の一角のようにほんの少しで、氷山のほとんどが海中に隠れているように、無意識と言われる茫洋たる領域があることを説明するモデルです。

これは組織デザインやワークショップデザインにも言えることだと思います。「私たちチームのビジョンはほにゃほにゃです」「今年のうちの会社の目標ははにゃはにゃです」と明文化されたものは意識の上にあるので氷山の見えてる部分。

次にそれらを達成するために起こしている実際のアクションがありますが、それは海面と海中両方にまたがります。つまり、意識できている部分もあるし、無意識になってしまっている行動もたくさんある。

そして、組織に所属するメンバー1人1人のニーズがあります。ここが一番意識されにくい。チームやグループの結成当初は、志を同じくして集まったと信じる人たちですが、いざ目標に向かってタスクを毎日こなすようになると、その方法論の違い、目標をどう解釈するかの違い、目標に対する情熱の違いなどが明るみになります。メンバー個々人がそれぞれ満足し、得たいと願うものを獲得しながら一つの組織としてのビジョンも追いかけていくには、日常的に微調整を図っていくことが不可欠。私のやり方は、細やかなコミュニケーションを取り続けることに尽きます。

これら3つのポイントは、ワークショップという一見「単発」のもの(長くても3〜7日間)をデザインするのにも共通して言えることです。

  • 何を目的としたワークショップで、
  • 誰に参加して欲しいかというコンセプトを明確にし、
  • 参加して欲しい人にちゃんとアピールするようなブランディングをし、
  • 参加者ターゲット層と、達成したい目的に沿ってプログラム全体の流れをデザインします。「ストーリー作り」をしましょう。
  • 徐々に細部に目を向けて、目標着地点に降りられるような最適なメソッドを選んでいきます。(体を動かすアイスブレーカー?ペアワークがいい?自然に出て行く?ワールドカフェ?フューチャーサーチ?独自のを作る?)
  • ワークショップをデザインするファシリテーター側の意図と、参加者の期待値を意識しながら、双方のニーズが満たされるようにします。双方が一致していなくても、2重の意味づけができるようにデザインすれば大丈夫。
  • ワークショップ当日に参加者の反応を観察し、その場に生まれ出る空気に合わせて変更/修正ができるように「余白」を残したプログラムにします。

ワークショップをデザインするのに、複数の人間が集まって何かをする時に一体どんなことが起こりうるか、人間の反応や組織の発達段階についての基礎知識を持っていると、とても助けになります。理論だけじゃどうにもならないのだけど、現場を見ていて不思議に思った人たちが研究して理論が生まれるので、現場にいる人たちは学者が作ってくれた知識をまた現場に戻して活用してあげるのが大事と思います。組織論や社会心理学、臨床心理学、文化人類学などを応用する場がワークショップデザイン!

死生観を考えるワークショップをそのうちするよ。

土曜日はgreen drinks湘南に参加してきました。「green drinksって?」という人は

こちら

gd湘南のオーガナイザーの1人で、今回の会場となった平塚、宝善院のお坊さんである弓月くんとは、去年末に「R水素と仏教」というトークショーでご一緒させていただき、それから仲良くしています。3月末には成田山まで一緒に断食道場合宿に行ってきました。初挑戦だったので3日間しかやりませんでしたが、逆に3日目でやめるのが一番体にとってはきついんだって。実際、私は2日目、3日目と飢餓症状というものが出てギリギリを経験しました。今度は5日間やってみよっかなー。

と、今回はその話ではない。

土曜にgd湘南で「百字偈(ひゃくじのげ)」という菩薩様のお経の写経と、和綴じ製本を初体験してきました。

写経&和綴じ製本キット

できあがり

筆を握り文字を書くという行為とあまりにも長い歳月離れ過ぎていたため、体の変なところに力が入ってうまくバランスが取れず苦労しました。それに、難しい書き慣れない文字が多かったので、漢字の形を目で追ったり書き順に戸惑ったりと、瞑想とはほど遠い状態でした。呼吸と共に筆を下ろすということに、体が馴染み始めてテンションがうまく弛み出した頃に100字終了。茶道と同じで、まずは作法と所作を体が覚え込み、動きが無意識に出るようにならないと、自己と対峙するというところには行き着けないのだろうなと感じました。その後、針と糸で表紙を留めていき、手づくり経本が完成!

green drinksの最後は、お酒を飲みながら好きなことを語らいます。その時に弓月くんと話した私たちの野望(笑)について少し。

それは、日常において「死」と「生」に向き合い、自分の世界観はどのような骨組みになっているのか考えるスペースをワークショップを通して創っていくことです。弓月くんは職業柄、お葬式、法事と人の死とそれに関連する儀礼に立ち会うことがしょっちゅうあります。私は父の死によって、自分がそれまで信じて存在してきた世界観の崩壊を経験し、瓦礫の山から新しい世界を構築している、まさにその道すがらにあります。やっとこさ、瓦礫の下敷きになってたところから這い出して来た。父の死を受け止め、悲しみを表現するgrief processを進めてきています。

弓月くんと私はそれぞれ違う立場から「死=生」というものと日々触れています。だから、一見、日々の生活には関係ないような「死」という重々しいテーマを考え内面化していくことが、自分たちのなにげない1日の過ごし方に多大な影響を与えることを実感しています。どんな仕事をし、どんな伴侶を選び、どういったライフスタイルを作っていくかは、どんな風に生き、どんな風に死にたいかに直結していると思うのです。「死」の概念を問い直すことが、ポジティブに生に関わっていく原動力ともなる。

こんなことを安心、安全、居心地のいい空間で話していけるような活動をしていきたい。来年かなー。

グラフィック、そしてプロセスレコーディング

2月20、21日は「未来を創るワークショップ」に参加しました。これは「偶然の未来を必然にしてしまうための閃き」を得るプログラム。1日目はグラフィックレコーダ—として、2日目はプロセスレコーダーとして作品創ってきましたよ。

1日目の午前中は榎本英剛さんのストーリーに沿って、ヒストリーマップを描きました。まずはアメリカから持ち帰ったコーチングを日本に広めるべく、CTIジャパンという組織を立ち上げてコーチングの礎を築きました。続いて、イギリスよりトランジションタウンという構想を学び、神奈川県で実践し始めました。さらに、南米のインディアンが受け継ぐ知恵を、“Change The Dream” という活動を通して日本人に教えていらっしゃいます。ゴールやビジョンを明確にすることがよしとされる傾向にありますが、それだけに囚われるのではなく、自分の内なる声に耳を傾けて流れるままに進んで行くことが、本当に描きたい未来へ近づく道だということを体得された方でした。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

グラフィクレコードの説明をちょっとしますね。写真をクリックすると拡大したものが見れます。1番下の段は榎本さんの実際取った行動や、その時々で思ったことをレコードしています。真ん中は、地理的な移動や、メインとなるプロジェクトについて記してあります。1番上の、オレンジ色のパッと光っている円で囲まれているのは、榎本さんの内なる声です。

午後は土屋さんというファシリテーターの方がAppreciative Inquiry (AI) を応用したワークショップをおこないました。AIは、自己内の気付き、他者との対話、ゴールを設定し、行動を起こさせ、変化を目に見える形にし、結果を確実に出していくという一連のプロセスをまとめたもので、組織開発の方法論として使われています。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

半日かけて、大きくわけて3つのことをしていきました。最初は、2人組になって与えられたスキームに沿ってインタビューし合うもの。1時間ほどしたら、今度は6人程度のグループを作り、各ペアが何を話したのかを共有します。つまり、各グループに3組か4組のペアがあった、ということです。合計で7グループできました。1番左側のグラフィックは、各グループ内で話したことが何だったかを要約してもらい、会場全体で報告した時のものです。言葉を中心にキャプチャーしました。

次にまた、7つのグループに戻ってもらいました。それまでのアクティビティーでひっかかった言葉、「すごい」と感じた言葉を参加者はポストイットに書き留めていたので、それを並べ替えてマッピングし、全体像を比喩を使って表現するというもの。真ん中のグラフィックは各グループがどんなメタファーを思いついたかを絵で表しています。

右側のは、そのメタファーをもとに各グループで「描きたい未来」を決めてもらい、ロールプレイで表現したものをレコードしました。

2日目はプロセスレコーディングに初挑戦。何それ?って、言ってしまえばコラージュです。カメラマンの方が2日間の様子をずっと撮影していました。そのデータをどんどんプリントアウトしていって、その場で切ったり貼ったりコラージュを創っていくという作業です。見た方が早いのでこれ↓

created by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

写真が捉える臨場感というのもパワフルで、長い2日間を終えた参加者が、部屋を退出しながら最後にこのコラージュの目にして、立ち止まり、上から下まで何度も何度も見ては噛み締めている様子が印象的でした。

グラフィック・ファシリテーションって?

先日、Art of Hostingというワークショップにてグラフィック・レコーディングしてきました。

たった1行に聞き慣れない言葉がたくさん詰まっていると思いますが、まず、Art of Hostingとは、ワールドカフェ、オーブンスペーステクノロジー(OST)、サークル、Appreciative Inquiry (AI) といった「対話」を促すためにデザインされた「仕組み」を、複数組み合わせることによって、私たちの自己観察力を深め、思考パターンの転換を図り、また、一緒にワークショップを受けている人同士の絆を強めてくれる1つの方法論です。最終的に、社会に影響を及ぼすための「行動」を生み出すツールです。リーダーシップ育成、組織開発、国家レベルでの社会変革などにも用いられている、文字通り、実践的な「技術」です。(この場合の”art”とは、芸術ではなく技術を意味します。)

Art of Hostingの第1人者、Bob Stilger氏がアメリカより来日し、初めて日本でワークショップを開いてくれたんです。そこで、Art of Hostingってどんなことをするのかね?ということを説明するような記録を作ってと欲しい依頼され、参加してきました。

(graphic recorded by Naho Iguchi)

(graphic recorded by Naho Iguchi)

グラフィック・レコーディングというのは、1人の講演でも、10人のミーティングでも、50人のワークショップでも、数百人のイベントでも、種類や規模は何でもいいんですが、誰かが話しているものを、その場で聞きながら同時進行で言葉、アイコン、チャート、絵などを使い、文字の色やフォントデザインも変えながら、大きな白い紙の上に記録していくことです。

グラフィック・レコーディングは、もともとグラフィック・ファシリテーションというものから生まれました。レコーディングは「記録」すること。一方、ファシリテーションは、ミーティングやパネルディスカッションなどを「進行」することです。英語本来の意味は「促進する」とか「容易にする」。1人以上の人間が集まって会話をする時に、上手な質問をしてみんなに深く考えてもらったり、誰か1人が会話を独占していたら適当なタイミングでスッと入って、他の人が発言できるよう促したり、話の焦点が議題から遠く離れてしまったら、それに気づかせてあげるような言葉を投げかけたり、会話の舵取りをしながら、なんらかの帰着点まで導く役割を担います。

で、

グラフィック・ファシリテーションって何よ?というと、簡単に言えば、上記の2つを掛け合わせたもの。ファシリテーターとしてグループ内の会話をまとめていきながら、一緒にグラフィック・レコーディングもしちゃいながら、与えられた時間の中で目的を達成させるという、1人何役もこなすものです。

どんな場でグラフィック・ファシリテーションが有効かというと、プレインストーミングの質を高めるのにもいいですし、そこから進んで、実行計画案にまで持っていくことにも使えるし、組織の長期/中期/短期目標を決めるのにも使えるし、何か節目の時に過去50年を振り返る、ってな時にも使えます。何層にも折り重なる複雑な情報が飛び交うのを、一枚の大きな紙に、従来のノートやホワイトボードや黒板での単調な記録の取り方とは違った、目で見てパッと感覚に響く情報整理の仕方をしていく。

自分や周りの人が発している言葉が、目の前でライブで記録されていくのを目で読み、再び理解することによって、新しい発見が生まれます。人って、耳で聞いていることって、理解してそうでその実、正確な記憶として蓄積されない場合が多いですし、移り行く言葉の交差の中でどんどん変化していくのが普通なので、話し合いで相互理解や合意が得られたというのもわりと錯覚だったりするんです。本当は、何時間もかけて、何も話し合われていなかった、なんて日常茶飯事。そのことを視覚的にも学ばせてくれるし、さらにファシリテーターが自ら紙の上にまとめた色彩豊かでわかりやすい情報をもとに、混線しがちな会話を「そこそこ、それが必要なんだよ!」という痒いところに手が届く、みたいなポイントへしっかりとガイドしてくれる。だから、グラフィック・ファシリテーションというのは、会話の意義を明確にし、そこに費やす人的資産と時間と労力を最大限に生かすのに役立ちます。

これまでに、企業内のトレーニング、役員の戦略会議、今回のようなワークショップから、トークショーやストーリーテリングなど、色んなところでグラフィック・ファシリテーション及びレコーディングをしてきました。今年はもっと違ったシチュエーション、違ったニーズの中で応用していきたいなと思っています。