Visualize Your Process ワークショップ、またやります。

先月、土曜日の午後半日、机なんて取っ払っちゃって、体を動かして壁にも床にも自由に練習していくというスタイルでVisualize Your Prcess -グラフィックファシリテーション&beyond- ワークショップを行ないました。

来週11月10日(水)19時からは、Change The World (CTW) という会社とのコラボレーション企画で Visualize Your Process を開催します。CTW は日本社会に「創発」を生み出すイノベーターを育てて行くことをビジョンに、そのために必要な技術、知識、体験を多彩な講師陣を招いて提供しています。その名も、表参道アカデミー。

表参道アカデミーでの Visualize Your Process は、平日の夜3時間×3回の計9時間コース。グラフィック・ファシリテーションの基礎知識や、グラフィック・レコーディング(ファシリテーションしないでレコーダーとして徹する)の技術を教えるという根本的なところは揺るぎません。

違うところは、グラフィック・レコーディングをしている時に

  • どんな風に頭の中が動いているの?
  • どうやって情報を整理して、それを視覚的にデザインして、紙の上に落とし込んでるの?

という疑問をモジュールに分け、ステップバイステップで学んでいくスタイルにしました。

実際にグラフィック・レコーディングで使う「情報のレイアウト術」を試しながら、今現在の自分の人生にとって大事なこと、心にひっかかっていることをビジュアルマッピングしていきます。テクニックも学べるし、頭の中を少しクリアにしてあげられる、そんなワークショップです。

まだ残席があるのでお申し込みお待ちしています!

詳細はこちら→ 「表参道アカデミー Visualize Your Process -グラフィック・ファシリテーション&beyond-

Visualize Your Process ワークショップのこだわり

先週の土曜日に

Visualize Your Process 〜グラフィックファシリテーション&beyond〜

というワークショップをしました。

photo by Junya Mori

満員御礼ありがとうございました。12名の参加者+3名のチームメンバー+わたし

場所はgreenz.jpのオフィスをお借りしました。(ありがとー!!!)

1年半くらいグラフィックファシリテーション(GF)、グラフィックレコーディング(GR)をやってきて、たくさんの方から「これってどうやったら学べるんですか?」という質問、「教えて下さい!」というリクエストを受けてきました。これまでは依頼された組織へ向けてのクローズドなワークショップしかやっていなかったんだけど、この度、満を持してGFのオープンワークショップをしました。複数のファシリテーターやコンサルタントと組んでチームベースで仕事をする場合が多いので、今回のように自分1人でプログラムの骨子を考え現場を回していくというのは、実はけっこう久しぶり。(企画初期段階からサポートしてくれている、玲ちゃん、さとぽ、チャーリーというチームがいますが、ファシリテーター/トレイナーとしてはピンで入った。)

in-houseトレーニングの場合は、GRのテクニックのみを教える場合が多い。だけど、Visualize Your Process は私発信のサービス/プロダクトなので自由奔放に創りました。GFという側面だけではなく、コミュニケーション・プロセス・デザイナーとしての価値観をプログラムの隅から隅まで盛り込んでいきました。グラフィックレコーディングの技術、ファシリテーターとしての心得、普段の殻を破って創造的にアイディアを膨らませていくこと、ワークショップという経験をどうやってデザインしていくか、そんなことを体感し学べる場。

プログラムそのものの説明は置いといて、ここでは裏側のこだわりについて話そうかと。

(参加者の1人、@DiscoveryCoach さんがブログに書いて下さっています。どうもありがとうございます!!)

【こだわりポイント1】部屋のレイアウト

英語では “out of the box thinking” などと表現される、自分の殻を破って考え行動すること。これが重要ってのは理解できるけど、いきなりやれと言われてもどうすればいいのかわからない。そこで、物理的な環境を少し変えることにより行動パターンを変え、結果、考え方の転換をもたらすという認知行動学的なアプローチをワークショップの会場デザインでやってみました。

って、論理的にエラそうな説明してるけど後付けで、パッと思いついたアイディアをやってみただけです(笑)。

具体的には、机と椅子は取っ払い、広い空間を作って床に直接座るスタイルにしました。講師/ファシリテーターである私と参加者の間に遮るものは何もない。必要な人は椅子、机を出してこれます。私も床に座ったり、椅子に腰掛けたり、立ってGFしたり、常に体を動かしていました。

床にGFで使用するロール紙を敷き詰めて、カラーマーカーを参加者の手の届く所にたくさん用意。巨大な白い紙の上に座って好きなことを書いたり、GRの練習ができるようにしました。もちろん、壁にもアメリカから持ち帰ってきた120センチ高のロール紙を貼り、参加者みんな立ち上がって、全身を使って思い思いに縦、横、斜めに線を引っぱり、円を描き、アイコンやレタリングの練習をくり返しました。

Photo by Junya Mori

 

【こだわりポイント2】Psychological Safetyを創る

サイコロジカルセーフティーとは心理的安心感のこと。初めて会う人と一緒に初めてのことを学ぶ時、私たちは精神的に不安になり緊張します。自分の言動が「正しい」かどうか疑念が生まれ、技術的に下手な部分を他人に見せるのは羞恥心が先立って体が固くなってしまう。こういった気持ちを和らげ、新しいこと/苦手なことを試すというリスクのある行為をするには、それ相応の準備が必要になります。

そこで、ワークショップ開始と同時にアイスブレーカーに「うろ覚えお絵描き」をして、

「絵が苦手な私でもグラフィックファシリテーションできるの?」

という多くの人が持つ不安を溶かしてあげました。私のうろ覚えドラえもんやバカボンのパパを見たら「奈保さんは絵が上手だからグラフィックファシリテーションできるんですよ」などと口が裂けても言えないだろうなぁ。。。かんなり変なもん描く時あるからねー。

ちなみにこれが私のうろ覚えスネ夫と

 

うろ覚えアンパンマンです。

これでいいんですよ。十分(笑)!

参加者同士が親しくなっていくことも大切。緊張がほぐれ、Psychological Safetyが醸成されます。そのために、そこまでダダっ広くない部屋を選び、人数も許容範囲ギリギリまで入れました。こうやって物理的に密な距離感になると(しかも机や椅子という、他者との身体を切り離すものも入れなかったので)自然と親近感が生まれます。あと、実はどーーんと広い空間で野放しにするより、少し詰まった感じの方がクリエイティブになれたりして。

Photo by Junya Mori

【こだわりポイント3】おいしいお茶

創造性や刺激に富んだ発想は視覚からだけでは生まれない。味覚や嗅覚も重要な感覚器。視覚よりも記憶に残る場合があります。と、これももっともらしそうな説明で、要は、私がおいしいもの食べるのが好きだから、みんなにもおいしいものを食べて欲しい!ってシンプルな気持ち。その方が絶対に楽しくなるでしょ。笑顔になるし、会話が弾む。

というわけで、おいしいお菓子と飲み物を用意しました。私が大好きな地元のお菓子屋さん、ラマーレ・ド・チャヤのクッキーと、フレンチパン屋さんのブレドールからチーズとココア2種類のラスクと、有明屋さんの胡麻せんべいと昆布あられ。甘い系としょっぱ系バランス良くね。飲み物は数種類のフレーバーコーヒーと、秋を感じさせる「いもくりかぼちゃ茶」というルピシアのブレンドティー。飲むと本当にほっこりイモ、栗、カボチャの香りが鼻孔をくすぐるんです。スイートポテト食べてるみたい。ノンカフェインの黒豆茶も用意しました。

短いトイレ休憩を数回より、1度のお茶の時間をしっかり入れた方が心身がリフレッシュできるし、ワークショップというシチュエーションを少しでも外れた雰囲気で参加者同士が交流できるので使える仕掛けです。

【こだわりポイント4】匂い

コーヒーや紅茶と同じように、お部屋全体の香りも大事。あと、匂いで気になるのはやっぱりおトイレ。メイン会場が綺麗でも一旦そこを出ると「くわっ」ってなっちゃうのはイヤだよね。というわけで、おトイレの飾り付けと香り付けにも気を配りました。秋らしい一輪挿しをし、タオルを用意し、レモングラスのお香を焚いて快いおトイレ時間を!

【こだわりポイント5】私が自然体であること

ワークショップという場の責任者=ホストであり、参加者を楽しませるエンターテイナーであり、GFを教える先生であり、参加者同士のコミュニケーションを生み出していくファシリテーターであり、というように、私が何役もこなすのが “Visualize Your Process” の肝なんだなーと、やってみて実感。

こうやって場の状況に応じて即興で変幻していくには、何よりも私自身がリラックスしていないといけません。私が緊張していたり焦ってしまっては、それが参加者へ伝播し、私はますます立て直そうと頑張り、、、どんどんドツボにはまっていきかねない。そのため、ワークショップのイントロでプログラム概要やhouse keeping info(携帯電話、飲食、トイレの場所等のエチケットに関する基本情報)を説明する際に、自分がもっとも効果的なコミュニケーションをするために以下のことを伝えました。

  • 友人/知人が参加者の場合、講師ー参加者という関係性ではなく、いつも通り友人としての呼び方、話し方で接っする

これまで同僚や友達が私のワークショップに参加してくれた時、「ファシリテーター」「トレイナー」というプロとしての社会的役割を果たそうとすることに気を取られていました。普段は名前で呼び合ってるのに「さん」付けにしたり、丁寧語で話しかけることで、友人としての自然な距離感が崩れ、妙によそよそしくなり、私は違和感に苛まれ、結局、ファシリテーターとして効果的に立ち振る舞うことができないという事態を経験しました。去年は、違和感にさえ気づかなかった。今年は、違和感に気づき始めたけれど何が原因がはわかっていなかった。それが最近、「はっ!!」っと発見したんです。なので、今回はしょっぱなに「今まで通りの距離感で」と宣言してみました。初めて出会った参加者に対しては、初めての人として接することも伝えました。

普段の生活において、親しい仲間と新しい人と同時に過ごす機会ってよくある。ミーティングの時や、ご飯を食べに行く時。要は、そういう普段の状況下において私が自然に取る態度を、ワークショップという枠組みの中でも取りたかった。ワークショップだからという理由で、さらに違ったレイヤーをコミュニケーションの中に敷きたくなかった。

私にとっては効果的な戦術だったと思います。

Photo by Junya Mori

国際知識経済都市会議っていうのに参加してきました

7月6〜9日は福岡に出張してきました。福岡の人は人なつこくホスピタリティに溢れていました。焼き鳥もおいしかった。

福岡で何をしてきたかというと、国際知識経済都市会議International Regions Benchmarking Consortium)にて、4つのパネルディスカッションをグラフィックレコーディングしてきました。そのグラフィックレコードは、会議の最後におこなわれた参加者、モデレーター、スピーカーのための対話の場(オープンスペーステクノロジ—とワールドカフェ)で活用されました。

Graphic recorded by Naho Iguchi

お話をいただいたきっかけは2月中旬に遡ります。スピーカーとして出させてもらった西村ゆうやんのダイアログバーの参加者の方がこの国際会議の実行委員で、プランニング中に私のことをふと思い出し、4ヶ月後にひょいっとメールをくださったのです。こうやって公の場に出て自分の活動について地道に語っていくことは、必ず次に繋がるのだなぁと実感すると共に、機会を与えてもらえることに感謝感謝です。

このお仕事は私にとってチャレンジがいくつかありました。

  1. 「知識経済」「知識経済都市」ってなんだよ?な状態だったこと
  2. 英語でのパネルディスカッション(1セッション90分)×4を英語でグラフィックレコードすること

知識経済とは(わたし解釈)、

知識創出を教育機関・行政・産業が恊働して促し、知識をきちんと保管、伝承していきながらマネタイズもしてその地域の経済を活性化させていく、という考え方とその取り組みのこと

らしい。

知識経済都市を作っていこうとする北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアの中くらいの都市のネットワークがこの会議。ベンチマークしながら地域経済活性化してこうぜ、という交流と学びの場でした。

今回で3回目になった本会議では、知識経済という学問分野においてベース理論である「トリプルヘリックス」から発展して、「トリプルヘリックスとコア」という新モデルをもとに議論がなされました。トリプルヘリックスはいわゆる産官学のコラボレーション。でも実際問題、「産官学寄り集まっても何にも起こらんじゃんね」というのがあって、産官学を繋げる専門の役割が必要じゃないか、というアプローチ。それが「コア」。

Graphic recorded by Naho Iguchi

会議ではバルセロナ、ヘルシンキ、ストックホルム、メルボルン、シアトル、バンクーバー、福岡といった各都市の行政、教育研究、産業分野で都市改革を押し進める実践者たちがプレゼンテーション、パネルディスカッション、ダイアログを繰り広げました。すでに実行された/されているプロジェクトのリーダーたちの、実例交えた話はGRするのも楽しかったです。

Graphic recorded by Naho Iguchi

英語でのGRは日本に帰国してからはほとんどする機会がなかったので、これもドキドキでした。「書くスピードが間に合うかな」「アクセントのある英語が聞き取れるかな」「専門用語や都市特有の固有名詞が出てきたらどうしよう」などなど、本番前日までは不安もありましたが、始まってしまえばやれるだけをやるしかないので、ある意味「諦観」の心が育ちます(笑)。

一つ珍しかったのが、2日目の会場が能楽堂で、そこでGRしたこと。なかなか経験できることじゃないよね。GRは自分と紙とペンがあればどこでもできるポータブルなものなのだけれど、実は物理的空間のアレンジ(壁が真っ平らとか、テープ貼っていいとか、人から見える位置でやるとか、いろいろある)は非常に重要です。能楽堂の照明は暗いし、能舞台の周りは石が敷き詰めてあってGRできる状況じゃないし、用意してもらった紙を貼るパネル(黒板でした)は高くて、ちびっこの私にフィットしてなかったりと、難問はあったもののクリアして仕事ができてよかったです。

もう一つミーハーな出来事は、スペイン、バルセロナにある超有名で私の大好きなガウディの建築、サグラダファミリアの主任彫刻家、外尾悦郎さんとお話する機会があったこと。最終日のワールドカフェで同じテーブルになり、「『トリプルヘリックスとコア』というモデルは平面(2D)でしかない。でも、もっと立体的に捉えていく必要がある」という外尾さんのアイディアに、「じゃあ立体で創ってみましょう」と私が提案し、テーブルにおいてあった紙を切ったり折ったり、人間の本質を構成するエレメントを表わす3Dモデルを作ってみました。外尾さんと即興コラボレーション。感激です!

地方とのお仕事もっとしていきたいなー。これからは、「グラフィックレコーディングとはどう使うものか」をわかっていないと最大限の効果が得られないので、その部分から伝えていってプランニングの段階から参画していきたい。さらには、グラフィックレコーディングでなく、「グラフィックファシリテーション」(=レコーディングをしながら、実際に私が場のholdをしていく)を普及、応用していきたいです。

Reflection on Actions

新しい人に出会っても、昔からの仲間と集まっても、必ず受ける共通の質問:

「仕事は何やってるの?」

答えは

コミュニケーション・プロセス・デザイナー

「人の営みはすべてコミュニケーションに収束する」というのが、私の世界観を構築する反証のしようがない前提(underlying assumption)としてあります。真理、とでも言うのでしょうか。ここで言うコミュニケーションには、言語、非言語、意識下、無意識下、対他者(1対1から対複数まで)、対自己。さらに、異文化間、多文化間、グローバルなど、さまざまな種類と層が含まれます。

そして、人が集まると組織が形成されます。家族でも、ボランティアでも、友達の集団でも、企業でも、何らかの組織体として捉えられます。だから、人と組織あるところにコミュニケーションあり。

そんなコミュニケーション、「何を伝えるか」の重要性は説かれ、みんな意識を向けて一生懸命になるけれど、「どう伝えるか」の重要性や方法論は軽視されているなぁと感じる場面が多々あります。だから世界はこんなんなっちゃってるんじゃん、と。人は1歳ちょっとの頃から言葉を操り始め、日々コミュニケーションをするので、デフォルトな故にその難しさが見えなくなり、必要な力や技術を育てる環境や仕組みができていないんじゃないかと。コンテンツのプロフェッショナルはどの分野にもいる。だから、それはその人たちに任せて、自分は「プロセス」のエキスパートになろう、という思いで始めたのがコミュニケーション・プロセス・デザイナーです。

2010年上半期は加速的に忙しくなり、久々にギアチェンジしないでアクセル踏み込みまくってました。夏になる前に一段落ついたので、何をしてきたか振り返り。

  • 未来を創るワークショップでグラフィックレコーディング
  • R水素ネットワークでデンマークにあるR水素コミュニティへ取材&ネットワーク構築
  • アダム・カヘンのシンポジウムでグラフィックレコーディング
  • greenz.jp とgreen drinks の新企画プランニング
  • 某米企業の日本進出に関するコンペでの通訳
  • R水素ネットワークで米グリーンテクノロジ—企業とのネットワーク構築
  • 某日系企業内の横断的対話を生み出す仕掛け作り
  • 青山学院大学、青山コミュニティラボでのホワイドボードデザイン
  • ボブ・スティルガーの来日講演でグラフィックファシリテーション
  • 某外資系IT企業の人事/教育のお仕事
  • Dialog Bar 西村氏らとArt of Hosting Japan 開催
  • TEDxTokyo の企画運営統括、チームデザイン
  • TEDxTokyo yz の立ち上げ、コミュニティビルディングとver. 1.0 の開催。初MC!
  • 某米系企業と某省庁の商談の通訳
  • ハワイで開催のThe World Congress on Zero Emissions Initiative の運営サポート
  • などなどなど

コミュニケーションのhowに関連するレパートリーを増やすべく、社会企業、教育、環境、ビジネス、地域活性、都市開発、、、、多岐に渡る分野で、組織形態(for profit, not-for-profit, volunteer, etc.) 、セクターや国の垣根に囚われずに活動しています。

プロジェクトを興し、その中心となる組織をゼロから育て、その組織内だけに収まらないステークホルダー全体を鳥瞰しながら長期的に流れる仕組みを作り、組織内でのプランニングをし、行動に落とし込み、結果を出し、フォローアップをし、調整し、組織の発達段階に合わせてリデザインし、それに準じて仕組みにも手を加え、、という幾重にも連なる入れ子構造的なプロセスのデザイン。これをグローバルなレベルで、しかもローカルにも配慮しながら実行していくプロというのがこれから必ず必要になる。コミュニケーション・プロセス・デザイナーとはそういう仕事だなーと思い描きながら、毎日実践しています。

グラフィック、そしてプロセスレコーディング

2月20、21日は「未来を創るワークショップ」に参加しました。これは「偶然の未来を必然にしてしまうための閃き」を得るプログラム。1日目はグラフィックレコーダ—として、2日目はプロセスレコーダーとして作品創ってきましたよ。

1日目の午前中は榎本英剛さんのストーリーに沿って、ヒストリーマップを描きました。まずはアメリカから持ち帰ったコーチングを日本に広めるべく、CTIジャパンという組織を立ち上げてコーチングの礎を築きました。続いて、イギリスよりトランジションタウンという構想を学び、神奈川県で実践し始めました。さらに、南米のインディアンが受け継ぐ知恵を、“Change The Dream” という活動を通して日本人に教えていらっしゃいます。ゴールやビジョンを明確にすることがよしとされる傾向にありますが、それだけに囚われるのではなく、自分の内なる声に耳を傾けて流れるままに進んで行くことが、本当に描きたい未来へ近づく道だということを体得された方でした。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

グラフィクレコードの説明をちょっとしますね。写真をクリックすると拡大したものが見れます。1番下の段は榎本さんの実際取った行動や、その時々で思ったことをレコードしています。真ん中は、地理的な移動や、メインとなるプロジェクトについて記してあります。1番上の、オレンジ色のパッと光っている円で囲まれているのは、榎本さんの内なる声です。

午後は土屋さんというファシリテーターの方がAppreciative Inquiry (AI) を応用したワークショップをおこないました。AIは、自己内の気付き、他者との対話、ゴールを設定し、行動を起こさせ、変化を目に見える形にし、結果を確実に出していくという一連のプロセスをまとめたもので、組織開発の方法論として使われています。

recorded by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

半日かけて、大きくわけて3つのことをしていきました。最初は、2人組になって与えられたスキームに沿ってインタビューし合うもの。1時間ほどしたら、今度は6人程度のグループを作り、各ペアが何を話したのかを共有します。つまり、各グループに3組か4組のペアがあった、ということです。合計で7グループできました。1番左側のグラフィックは、各グループ内で話したことが何だったかを要約してもらい、会場全体で報告した時のものです。言葉を中心にキャプチャーしました。

次にまた、7つのグループに戻ってもらいました。それまでのアクティビティーでひっかかった言葉、「すごい」と感じた言葉を参加者はポストイットに書き留めていたので、それを並べ替えてマッピングし、全体像を比喩を使って表現するというもの。真ん中のグラフィックは各グループがどんなメタファーを思いついたかを絵で表しています。

右側のは、そのメタファーをもとに各グループで「描きたい未来」を決めてもらい、ロールプレイで表現したものをレコードしました。

2日目はプロセスレコーディングに初挑戦。何それ?って、言ってしまえばコラージュです。カメラマンの方が2日間の様子をずっと撮影していました。そのデータをどんどんプリントアウトしていって、その場で切ったり貼ったりコラージュを創っていくという作業です。見た方が早いのでこれ↓

created by Naho Iguchi, photo by Junichiro Hiraoka

写真が捉える臨場感というのもパワフルで、長い2日間を終えた参加者が、部屋を退出しながら最後にこのコラージュの目にして、立ち止まり、上から下まで何度も何度も見ては噛み締めている様子が印象的でした。

グラフィック通訳

グラフィック・ファシリテーターとしてお仕事をする時、クライアントの話す言語と、私がファシリテーションする言語と、紙にレコーディングしていく言語はすべて統一されています。日本語なら日本語。英語なら英語。

一方、グラフィック・レコーダーとしてお仕事する時は私が主だって舵取りすることはなく、ファシリテーターやメインのスピーカーが別にいます。そして、スピーカーが外国人で聴き手が日本人ということが少なくありません。こういう場合、ほぼ100%通訳の方が別にいます。例えば、アメリカから来日したスピーカーが英語で語り、通訳さんが日本語に訳し、会場は日本語で聞く。この時、グラフィック・レコーディングは基本的にオーディエンスに合わせて日本語でおこないます。

グラフィック・レコーディング(ファシリテーションもですが)はとにかく「聞く力」と「書くスピード」が命。誰かが話している言葉を記憶し、簡潔/短縮にし、その情報を紙面のどこにどうやってレイアウトするかをデザインし、実際に書き記していくのを、瞬時瞬時におこなっていきます。

なので、通訳さんが話すのを待っている間に、スピーカー本人の言葉を聞きながらレコーディングしていった方が時間的効率は断然いいわけです。となると、英語で聞いた言葉を自分で訳して日本語でグラフィック・レコードして、通訳さんの日本語は確認のために聞き直す、という作業になります。

これって、新しい、視覚的な通訳の方法としておもしろいんじゃないかな〜?と思いついたわけです。

しかも、耳が聞こえない人にもいいんじゃないの?

手話通訳ならぬ、グラフィック通訳。

グラフィック・ファシリテーションって?

先日、Art of Hostingというワークショップにてグラフィック・レコーディングしてきました。

たった1行に聞き慣れない言葉がたくさん詰まっていると思いますが、まず、Art of Hostingとは、ワールドカフェ、オーブンスペーステクノロジー(OST)、サークル、Appreciative Inquiry (AI) といった「対話」を促すためにデザインされた「仕組み」を、複数組み合わせることによって、私たちの自己観察力を深め、思考パターンの転換を図り、また、一緒にワークショップを受けている人同士の絆を強めてくれる1つの方法論です。最終的に、社会に影響を及ぼすための「行動」を生み出すツールです。リーダーシップ育成、組織開発、国家レベルでの社会変革などにも用いられている、文字通り、実践的な「技術」です。(この場合の”art”とは、芸術ではなく技術を意味します。)

Art of Hostingの第1人者、Bob Stilger氏がアメリカより来日し、初めて日本でワークショップを開いてくれたんです。そこで、Art of Hostingってどんなことをするのかね?ということを説明するような記録を作ってと欲しい依頼され、参加してきました。

(graphic recorded by Naho Iguchi)

(graphic recorded by Naho Iguchi)

グラフィック・レコーディングというのは、1人の講演でも、10人のミーティングでも、50人のワークショップでも、数百人のイベントでも、種類や規模は何でもいいんですが、誰かが話しているものを、その場で聞きながら同時進行で言葉、アイコン、チャート、絵などを使い、文字の色やフォントデザインも変えながら、大きな白い紙の上に記録していくことです。

グラフィック・レコーディングは、もともとグラフィック・ファシリテーションというものから生まれました。レコーディングは「記録」すること。一方、ファシリテーションは、ミーティングやパネルディスカッションなどを「進行」することです。英語本来の意味は「促進する」とか「容易にする」。1人以上の人間が集まって会話をする時に、上手な質問をしてみんなに深く考えてもらったり、誰か1人が会話を独占していたら適当なタイミングでスッと入って、他の人が発言できるよう促したり、話の焦点が議題から遠く離れてしまったら、それに気づかせてあげるような言葉を投げかけたり、会話の舵取りをしながら、なんらかの帰着点まで導く役割を担います。

で、

グラフィック・ファシリテーションって何よ?というと、簡単に言えば、上記の2つを掛け合わせたもの。ファシリテーターとしてグループ内の会話をまとめていきながら、一緒にグラフィック・レコーディングもしちゃいながら、与えられた時間の中で目的を達成させるという、1人何役もこなすものです。

どんな場でグラフィック・ファシリテーションが有効かというと、プレインストーミングの質を高めるのにもいいですし、そこから進んで、実行計画案にまで持っていくことにも使えるし、組織の長期/中期/短期目標を決めるのにも使えるし、何か節目の時に過去50年を振り返る、ってな時にも使えます。何層にも折り重なる複雑な情報が飛び交うのを、一枚の大きな紙に、従来のノートやホワイトボードや黒板での単調な記録の取り方とは違った、目で見てパッと感覚に響く情報整理の仕方をしていく。

自分や周りの人が発している言葉が、目の前でライブで記録されていくのを目で読み、再び理解することによって、新しい発見が生まれます。人って、耳で聞いていることって、理解してそうでその実、正確な記憶として蓄積されない場合が多いですし、移り行く言葉の交差の中でどんどん変化していくのが普通なので、話し合いで相互理解や合意が得られたというのもわりと錯覚だったりするんです。本当は、何時間もかけて、何も話し合われていなかった、なんて日常茶飯事。そのことを視覚的にも学ばせてくれるし、さらにファシリテーターが自ら紙の上にまとめた色彩豊かでわかりやすい情報をもとに、混線しがちな会話を「そこそこ、それが必要なんだよ!」という痒いところに手が届く、みたいなポイントへしっかりとガイドしてくれる。だから、グラフィック・ファシリテーションというのは、会話の意義を明確にし、そこに費やす人的資産と時間と労力を最大限に生かすのに役立ちます。

これまでに、企業内のトレーニング、役員の戦略会議、今回のようなワークショップから、トークショーやストーリーテリングなど、色んなところでグラフィック・ファシリテーション及びレコーディングをしてきました。今年はもっと違ったシチュエーション、違ったニーズの中で応用していきたいなと思っています。