10月9日から20日まで京都ヴィパサナ瞑想センターに行ってきました。10日間座り続けるのではなく奉仕者として申し込んだのですが、どんな役割になるかは行ってからのお楽しみ♪ということで、9日のお昼前に到着すると、センターに長期滞在して奉仕と瞑想を繰り返しているクニちゃんから「コースマネージャーをお願いします。」と言われました。他にどんな役割があるのかも知らないし、センター側が割り当ててくれたのだから、「はい」と答えました。そこから怒濤のOJT(笑)が始まりました。いやはや、とにかく本当にすごい修行でした。
ヴィパサナ瞑想はDAY0からDAY11まであります。着いた日がDAY0。この日の夕方4時から生徒さん(瞑想参加者)が受付にやってきて、6時にお夕飯、7時からオリエンテーション。8時から瞑想が始まります。DAY1からDAY9までは聖なる沈黙と言って、コースマネージャーと瞑想指導者以外の人とは一切の言語・非言語コミュニケーションが禁止されます。視線を合わせたり、ちょっとしたジェスチャーもなし。「まるで自分1人しかいないように過ごす」ことが求められます。他者に触れること、書くこと、読むこと、描くこと、音楽を聞くこと、運動をすることなども禁止です。DAY10の午前中で聖なる沈黙は解かれ、翌日にセンターを離れて下界に降りる心の準備をします。DAY11の朝に最後の瞑想があり、掃除をして終りです。
お仕事は任命されてすぐに始まりました。右も左もわからぬまま、資料に目を通し、奉仕経験のある人を質問攻めにしながら、まずは生徒さん受け入れ準備。最初はまだ全員の奉仕者が揃っていないこともあり、キッチンでネギを切ったりあれこれお夕飯のお手伝いをしながら、受付の準備やオリエンテーションで説明しなければならないことを理解します。そしてあっという間に4時。何をすればいいのか半分くらいしかわかっていないことは内緒のまま、笑顔で「こんにちは。ようこそいらっしゃいました」とレジストレーションをします。そして7時になると、知った顔してコースやセンターでの過ごし方の説明を男女60名弱の生徒さんにします。職業柄、こういうことは慣れているはずだけれど、まるで、初めて入ったプロジェクトでいきなりオーソリティーロール、みたいな状況で、内心あわあわするし、しょっぱなから修行でした。ちなみに男女隔離の生活のため、男女に1人ずつコースマネージャーがいます。私の相方は屋久島からやってきた太一くん。コースマネージャー経験も豊富な頼れる男でした。
1日5〜6時間瞑想をし(生徒さんは10時間)、それ以外は生徒さん1人1人がどんな健康状態でどんな薬を摂っているかを把握し、瞑想中や休み時間での様子に意識を払い、彼女たちの生活ニーズや色々な質問に対応します。26名いたので名前と顔を一致させるのが一苦労。それから、瞑想開始と終了を知らせるベルを鳴らして時間管理をします。毎日、トイレ、シャワー、瞑想ホールや廊下、庭の掃き掃除をし、指導者と生徒さんがコミュニケーションする時の通訳、指導者からの指示への対応などフル稼働でお勤め。瞑想中も生徒さんの動きと指導者からの指示にいつでも応じられるように心構えしながらヴィパサナ瞑想をやるので、意識レベルをどこで保ち、深い無意識との対話と、現実世界で起こっていることをどう両立させていくかが鍵でした。特に生徒さんが指導者に質問をする時の通訳が大変。生徒さん自身、自分がどういう状態で何をどう言葉で表したらいいかわからないので、その言ったことをそのまま通訳するのが難しかった。指導者の言葉を間違えのないよう的確に伝えるのも修練が必要でした。瞑想状態から瞬時に脳の活動範囲をスイッチさせて通訳モードに入るために、自分でも気づいていない莫大なエネルギーを消費していた気がします。「ああー、頭がついていかないーーー」ということが後半になると増えていきました。夜は9時過ぎからメッタバーバナという愛と慈悲の瞑想を、生徒さん、指導者、奉仕者チーム、センター内のすべての生き物に向けて行ない、その後ミーティングをして、10時から10時半頃就寝。瞑想を始めると意識が違うステートに入って睡眠が浅くなるため、何度も目覚めたり、眠っている状態を観察したりしていました。
コースマネージャーは、指導者のすぐ横という瞑想する位置(すべての人の瞑想の座布団の位置は決められている)、生徒さんには許されていない行動の自由、規律を遵守しているかを見守るという役割、指導者と生徒さんを繋ぐという立場から、この12日間だけ形成される組織の中で、指導者の次に強いパワーを相対的に持つことになります。実際は単なる奉仕者その1なので、これといった実権はないのですが、与えられるタスクの性質と瞑想ホールでの物理的な位置関係から自動的にパワーが生まれます。おもしろい現象です。現実世界のパワーダイナミクスも大概こんなものですよね。
その一方で、トイレ掃除、ゴミ箱の管理、虫が出たら取ってあげる、生徒さんが何か必要だと言えば奔走するなど、普段の社会ノームであればパワーバランスが弱い立場の人がやる仕事も同時にやります。また、私のように初めて奉仕者を経験すると、長期滞在をしていて物事を熟知しているメンバーや過去の奉仕経験者にわからないことはすべて聞きます。私には知らないことが山のようにあります。さらに、瞑想に関しては全てを指導者の判断に任せるため、ほんとに小さなことでも自分で判断して受け答えることはタブーで、「先生にお聞きしてきます」と言って指示を仰ぎます。
補足ですが、組織のリーダー格の人たちは、こういう自分のロールやステータスが変わる体験をコンスタントにやって自己認識を刷新するのがいいのではないかなーと感じました。
このように幾種類もの役割、力関係の境界を行ったり来たりしながら、意識レベルも行ったり来たりしながら、自己対峙という繊細な作業を続ける26名の他人とコミュニケーションをとり、他の奉仕者たちと仕事を通じて日々チームビルディングをし、そして自分の瞑想修行をする。ハードコアでした。
そんなタフな12日間をめっちゃ楽しく過ごせたのは、奉仕者チームのメンバーのおかげ。はじめましてで出会ってすぐにチームとして動かなければならない中で、うまくいかない例は山と聞くのだけれど、私は本当にラッキーで全員素晴らしい人たちでした。クニちゃんも「こんなにも暇があれば休憩も取らずにキッチン(奉仕者の基地)に集まって一緒に時間を過ごすチームは珍しい。」と何度も嬉しそうに言っていました。みんな驚くほど仕事が速く、何よりも、どんなダーティージョブでも自然の法として受け入れ粛々とやりこなしてしまうのが尊敬。みんな旅人だったのも共通。ここでしか出会えない人たちばかりだったのに、ミラクルな結束力とチーム力でした。クニちゃん、太一くん、ともちゃん、きたくん、たかくん、和田さん、ようこちゃん、ありがとう!!!!